あたらしい現実
「今」集中することで生み出される文化とは
Q&A

2022年4月13日(水)に開催した製薬業界向けウェビナー「あたらしい現実:「今」集中することで生み出される文化とは」では、日本のトップ製薬企業から以下のデジタルリーダーをお招きし、ディスカッションを行いました。(会社名五十音順)

・アステラス製薬株式会社 情報システム部部長 須田 真也氏
・参天製薬株式会社 チーフ デジタル&インフォーメーション オフィサー 原 実氏
・田辺三菱製薬株式会社 デジタルトランスフォーメーション部長 金子 昌司氏
・CI&T株式会社 シニア・オペレーショントランスフォーメーションマネージャー 橋永 ローズ
・(モデレーター) CI&T株式会社 シニア・ビジネスグロースマネージャー 岡田 健太郎


非常に多くの方々のご参加を賜り、大変インタラクティブなセッションとなりました。
セッション中に寄せられた数々のご質問に、パネリストより回答を承っておりますので、ご覧くださいませ。

尚、セッション動画は、こちらよりご視聴頂けます。
ウェビナーレポートは、こちらのページからアクセスいただけます。

ぜひ、併せてご覧ください。

ご質問回答者回答
1. 貴重なお話、ありがとうございます。 今回のセッションテーマとESGテーマをどう結び付けてお考えか、教えていただけますでしょうか。原様(参天製薬)弊社では、社員の新しい働き方を支えるデジタルワークプレースの進展や、DXを支えるクラウド化の加速などが、移動やオフィススペースの削減、データセンターのCO2排出削減、電子廃棄物削減などESGの環境分野に貢献。医療従事者や患者・一般生活者向けのオンラインプラットフォームをアジャイルに展開していくことで、ESGのSに貢献。さらに、社内のデジタルガバナンスを向上することにより、イノベーションのリソースを効率よく配分したり、内部統制の向上、経営の意思決定スピードの改善など、ESGのGへも貢献するという総合的なプログラムになっています。
2. 企業のグローバル化やDXのための人材・タレント戦略についてどうお考えでしょうか。原様(参天製薬)国内と海外のデジタルタレントを別々の人材プールとして扱わず、一つのフレームワークで考えています。デジタルワークプレースの進展により、大陸や時差をまたがったレポートラインを当たり前のようにすることで、適材適所のオプションが広げるようにしています。また、内部での育成と外部からの獲得をどちらか一方で検討することはせず、ハイブリッドにすることにより、社内にないタレントは外部から獲得し、内部メンバーの刺激と成長にもつながるように心がけています。求める人材像については、技術的なスキルに秀でたタレントを多数抱えるのではなく、世の中にあるデジタル技術・サービス・プロセスなどをうまく社内のイノベーションに活かす提案企画力や、それらを活用してビジネス変革をするドライブ力のようなスキルを大切にしています。
3. 必要とされているデジタルトランスフォーメーションはリアルに対してどのような影響を及ぼすと考えますか原様(参天製薬)サービスのマルチチャネルが加速することにより、サービスを提供する側と受ける側の関係が一対一ではとどまらず、多対多になったり、データのより高度な活用によりエビデンスベースのプロセスやインサイトに基づいたサービスが当たり前になってきます。リアルのサービスがそれらの恩恵から完全に分離した形で存在しようとすると、サービスや品質面で競争力がなくなると考えています。ですから、デジタルの対極としてのリアルではなくて、デジタルによってプロセスが補完されたリアルが、完全デジタルのサービスとの選択オプションになっていくと想定しています。
4. リアル(患者やMRの方々)を重視されている製薬業界においてデジタルトランスフォーメーションの推進は会社全体で推進が必要と考えるが、ハレーションは起こらなかったのか?またそのハレーションをどのような形で解決してきたのか?金子様(田辺三菱製薬)少なくとも弊社では営業がリアルを重視しており、デジタルへの移行ということに対して確かに摩擦は大きいともいます。一方で、従来の医療情報の提供という枠組みでできることはどんどん限られてきています。解決が出来ているわけではありませんが、顧客のニーズ(必要な情報が得られればF2Fでなくてもよい)を第一として、効率化できる部分は効率化し、一方で営業の活動の定義を再構築することと思います。すなわち、単なる情報提供から脱却し、ステークホルダーも拡大させながら、新しい接点構築の在り方を営業と共に作って行くことが必要と思います。
5. Globalのメンバーと共にデジタル変革を行う中で、日本発のシステム変革という案件が非常に少ないことに驚きました。自分自身でも、こう変革した方がとアイデアが出たところで、US、EU、APACのメンバーを巻き込み、リードし、変革していくことの難しさを強く感じています。須田様(アステラス製薬)日本人や日本社会はベースとして価値観を共有できていることが多いので、価値観が違う相手に自分の想いを説明して理解してもらうことに慣れておらず、得意でないと感じています。言語のハードルもありますが、それ以上に価値観を共有しない相手との合意形成に至るプロセスのトレーニングを受けていないことが原因の一つかもしれません。企業において、合意形成に至りやすいのは顧客(ライフサイエンスにおいては患者さんや健康を願う人)の価値を語るところから始めると良いかもしれません。
6. Globalな企業をけん引される中で、Globalでのチームビルディングのやり方や、自分のアイデアを形にしていく方法論などありましたら、教えてください。金子様(田辺三菱製薬)先ずは互いをどんな人間であるか知り合うことが重要と思います。結局仕事は人で動きますので、一緒に仕事をしたいと思えるかが重要です。往々にして、グローバル企業ではそれぞれバックグラウンドが異なりますので、必ず互いの興味を引きあうことはできる環境にあると思います。あとは、自分が何者でどんなことを考えているかをきちんと伝えられる機会を作れるかにあると思います。 アイデアを形にしてゆくのは、私の場合1枚の絵に考えを落とすところから始めます。その1枚の絵をもって、信頼できる仲間(率直に意見を言ってくれる人)少なくとも10人程度にぶつけ、フィードバックを反映してゆくというのが良いと思います。Workshop形式で、1枚絵をたたいてゆくというのも効果的です。私の場合は、1枚の絵でシンプルン表現することにこだわります。
原様(参天製薬)文化の違いやコミュニケーションスタイルの違うメンバーが集まる中で、アウトプットを出していくには、異文化チーム内の信頼関係構築が重要です。以心伝心という言葉がありますが、文化の異なるグローバルチーム間でこれは通じません。1言って10理解してもらうのではなく、10言っても1ぐらいしか理解されていないかもしれないと思って、事に当たることも必要です。言葉の意味が伝わっているかではなくて、伝えたいメッセージの本質がメンバー間で「共感」できているかを確認しながら次に進むという作業が大切と思います。 ところで、大人数の会議に日本、アジア、欧米などの文化圏出身の参加者が混在していると、コミュニケーションスタイル的がダイレクトなメンバーが、その場を掌握してしまうということがあります。議事を進める人が異文化コミュニケーションの勘所を理解していないとうまいファシリテーションはできませんので、苦手なリーダーの方々はうまい方から社内でメンタリングを受けたり、時には社外の専門の講習を受けたりするのも良いものです。私自身は国連勤務時代に繰り返し訓練を受けましたが、このスキルは一朝一夕で身につくものではありませんので、自身のグローバルキャリア開発のプログラムの一つに組み入れるのも手だと思います。
7. アジャイルとウォーターフォールは使い分けるべきですか? Yesならば、アジャイルアプローチをとるべき案件と、ウォーターフォールアプローチをとるべき案件はどのような基準で切り分けるべきですか?ローズ(CI&T)プロジェクトをアジャイルで行うかウォーターフォール手法を採用するかは、重要なポイントではありません。最も重要なのは、トライ&テスト、測定、改善というマインドセット。アジャイルを採用しても、挑戦と改善のマインドセットがなければ、変革は起き得ません。一方、ウォーターフォールであっても、継続的な改善マインドがあり、試行と改善、このサイクルを繰り返すことできれば、十分変革に繋がります。このアプローチが適用でき、トライ&エラー、改善のサイクルを回せるようになったら、次はサイクルを短くしていきます。それにより、より素早い変革プロセスの創出が可能となるのです。チームはすでに変革をしているので、アジャイルか、ウォーターフォールかということはそんなに影響を及ぼさないのです。
8.(金子様へ)外資系の会社にいらっしゃったとのことですが、在籍されていたときに、実際にTransformationを経験されましたでしょうか。もし経験されたのであれば、どのようなことに苦労されたかお聞きしたいです。金子様(田辺三菱製薬)私が、ノバルティスに在籍していたときはまだ、デジタルやDXという言葉が出る前のことでした。しかし、トランスフォーメーションという視点であれば、日常茶飯事でした。常に大局的に市場を分析し、数字で物事を見る中で市況に変化があれば、すぐにチェンジプロジェクトが立ち上がり体制を変化していました。非常にドラスティックで、飽きることはありませんでした。
9. バリデーションが必要な規制領域でもアジャイルでのシステム開発の取組み事例があれば教えてください。原様(参天製薬)これまでのところ、事例はありません。CSV(Computerized System Validation)は、設計・実装・運用にわたるドキュメンテーションと言い換えても良いものであり、その部分までアジャイルにすると、頻繁な文書改訂を回しきれないリスクがあると考えます。 開発環境ではアジャイル、バリデーションおよび本番環境ではウォーターフォールでドキュメンテーションという組み合わせは、将来的にあり得るかもしれません。 現状、弊社でCSVを要するシステムは、なるべくSaaSやパッケージソフトウェア、CROなどへのビジネスプロセスアウトソースのいずれかによる実現を志向しています。グローバル、各地域・国で様々に変わり得る規制への対応や、ビジネス拡大・変革への対応をするするためには、限られたリソースのアウトプットを最大化する必要があります。規制領域では、多くの場合自社の独自色を出す必要があるケースは少ないと仮説し、SaaSプロバイダー、CRO、ITベンダーといった「その道のプロ」の力を借りて、ベストプラクティスを極力シンプルに活用するという考え方です。弊社の長期ビジョンで掲げた、価値最大化のために他者の強みを生かすというアプローチにつながります。将来的に、規制対応しつつ、弊社の独自色を出すべき課題や案件が増えてくる場合には、アジャイル+ウォーターフォールの組み合わせもあり得ると考えています。
10. トランスフォーメーションを遂げるためには、人材・システムなどの組織形態の変更・新しい企業文化の醸成など包括していると感じます。 人材にフォーカス当てる場合、まずどこのポイント・層に傾注するべきなのでしょうか?金子様(田辺三菱製薬)先ずは、トップにデジタルを理解してもらい、興味を持ってもらうことが重要と考えます。外部の講演を依頼したり、デジタルデバイスを経験してもらったり、体験してもらうことが重要です。また、トランスフォーメーションのイメージを定量数値も含めシンプルに提示することが重要と感じます。その次は、課長レベルのミドル層です。往々にして、中間管理職が変化阻害するケースが多いと思います。これは、明確なオペレーションの責務を持っているため、変化を嫌がるからです。変化に対するインセンティブを設計するか、人を変えることが必要と感じます。
原様(参天製薬)経営層とデジタルの執行体制の間で、会社のデジタル推進モデルを中央管理型、連携型、分散型で進めるかのある程度のアラインメントをした上で、その推進体制のリーダー層と実行部隊のコアになるポジションの強化から進めるのが理想と思います。そのうえで実際に活動がある程度回り始めた中で、社内のビジネス部門との連携やある程度の自由度を持たせた分散型の人材を巻き込んだプロセスのガバナンスモデルを改善強化していく必要があります。この過程で重要なのは、既存の取り組みのうち芽の出そうなもののスピードを殺さず支援することと、戦略に合わないものを見直すこと。こうしたガバナンスが効くためには上記のコア人材がリーダー層も含めて機能している。
11. 製薬企業の大きなコストドライバーであるセールス&マーケティング領域のトランスフォーメーションについてお伺いします。医療の個別化や希少疾患領域という文脈の中で、従来のSOVを中核に沿えた活動から脱却・トランスフォームし、本当の意味で患者さんを中心とした活動(例:そもそも受診をしていない人が適切な受診ができるなど)へのシフトが重要と拝察します。登壇者の皆様が、コマーシャルモデルのトランスフォーメーションを、①どのように進めているのか、②進める上で重視している点、③難しいと感じる点、についてご教示いただけると幸いです。金子様(田辺三菱製薬)まだまだこれからですが、SOVのモデルから脱却し、プル型エンゲージモデルへの移行は必須と感じます。これは、従来のMRの役割である情報提供の効率化を早急に進めるものです。さらにその先には、おっしゃるようにMRの新しい役割、モデルを作って行く必要があり、それは患者さん中心であり、自治体等を巻き込んだエリアでの新しい医療モデルの構築なのかもしれません。①効率化と、新しいモデルの構築は同時に進めてゆくべきものと考えております。②この変革を進めてゆくうえで、しっかりとマイクロセグメントされたDrのニーズを把握することと、MRのモチベーションの維持・向上は重要です。③新しいも出作りで、新しい接点構築を進めてゆき、医療のニーズに応えてゆけることは確かなのですが、これらが自社の売り上げ貢献になるのかという説得が難題です。
12. コストプレッシャーがあるだけに、価値が見えない中での投資が正当化が難しいと思います。 Bx/Dx、その進め方としてのアジャイルのコンセプトは賛成だが、具体的な投資になると止まるというケースがよくあります。ディシジョンメーカーに対してどのように「チャレンジ」を進めるべきですか?金子様(田辺三菱製薬)多くの場合、価値を見せることがむずかしい中でも見せてゆくことが必須と感じます。精緻に見せることが難しければ、難しい時ほど、その時の会社にとって必要となる本質的な変化・大きな変化(トランスフォーメーションの姿)を、経営目線で定量的数値も含め見せてゆくとが効果的と思います。その変革のイメージを、実現するためのものとして、これらの施策があります、しかし試してみなければわかりませんという言い方でしょうか。
13. イノベーティブな施策をアジャイルかつリーンに推進したいと考えています。他方、社内の意思決定プロセス(例:コンプライアンスなど)が律速となり、施策のサイクルを短期間で回すことが難しいという課題を感じています。従来型の活動を前提とした社内の意思決定プロセスとアジャイルな活動の両立について、皆様がどのようにお考えか、ご意見を賜れると幸いです。須田様(アステラス製薬)アジャイル型により失敗確率が高くなる、とは別の考え方をしてみてはいかがでしょうか?不確実性が高まっている時代において”やってみなければわからないこと”が増えています。その時代における取組み方として”致命傷となる失敗を避けるためにアジャイル型を用い、小さな失敗から学習して成果を出す”と考えると、”失敗する確率が高いこと”が必ずしも悪いとは限りません。ただ失敗へのハードルを下げるのではなく、やって良い失敗(学習できる失敗、挑戦に伴う失敗、リカバリーできる失敗)とやってはいけない失敗(学習するものがない失敗、致命傷となる失敗)を区別することで、やって良い失敗に対するハードルは下がるのではないでしょうか?
ローズ(CI&T)アジャイル手法では、タスクを細分化し、その都度確認をしながら進めるので、毎回きちんと振り返りをし改善を重ねれば、1つの失敗は小さな失敗(手戻りが比較的少なく修正可能)となります。ひとつひとつの小さな失敗を改善することで、結果として成功に導くことができる確率は従来の手法よりも高いかもしれません。また、予想外に状況が変化した場合、途中で方向性を変更することも可能です。ですから、アジャイルを失敗率の高さで測るのではなく、より柔軟で適応性の高いモデルで、小さな失敗から学ぶ機会として捉えてはどうでしょうか。
14. アジャイル開発など、前例がない施策における成果測定をどのように判断していくかについてお伺いしたいです。やり方が決まったコモンプラクティスでは、inputに対してreturnがある程度計測できる一方、新しい施策に取り組む上ではまさに「やってみるまでわからない」ことも多いと感じています。そのような状況で、ステークホルダーに対し、どのような成果主張をするか(より生々しい話では、施策を継続するための予算確保をするのか等)が重要と考えますが、登壇者の皆様はどのようにお考えでしょうか?ローズ(CI&T)アジャイル "とは、物事を循環的に実行する「手法」であり、「プロジェクト管理」とは切り離して考えています。 プロジェクト管理は、プロジェクト開始時の計画に基づいて行われる必要があります。スケジュール、ロードマップ、マイルストーン、コストはどんなプロジェクトでも管理すべき重要なものであり、アジャイルプロジェクトでも、それは同じです。従来の手法との違いは、柔軟に追加や変更ができることですが、変更した場合の影響を分析する必要があるのは、他のプロジェクトと同様です。CI&Tでは、もしコストに影響があるのなら、図表などに落とし込んで見える化・分析し、決定を下します。
15. アジャイルにプロジェクトを進めるうえでチーム造りの重要性は理解できるのですが、一方、チームの外にいる人や組織に対してのプロジェクトの理解や巻き込み方に対してはどのような事に心がけていますか?ローズ(CI&T)リーダーの役割が重要です。 開発チームがアジャイルに取り組んでいても、社内の他のメンバーがそうでなければ、おそらく社内がビジネス・トランスフォーメーションを実現することはできないでしょう。すべてのステークホルダーに改善の意識を持たせることが重要です。 方法としては、小さな目標をいくつか立て、小さな成果をいくつも上げ、信頼を高め、アジャイルという異なるプロセスを採用することで、いつもと違う、良い結果を残すことが可能であることをチーム外の人々に示すことです。
16. リーダーに必要なのがメンバーだということは腹に落ちます。しかし、恐らくそのメンバーは意欲的なメンバーであるはずです しかし会社にはぺけ社員もいます。ぺけ社員を抱えたリーダーのミッションはどう考えますか?須田様(アステラス製薬)このようなケースはリーダーよりマネージャーによる対応が重要かもしれませんが、ここでは区別せずに記載します。キャリアに対する考え方はWILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(役割・責務)の3つの円が重なったベン図をイメージすると分かりやすいです。対象となる社員と、WILL、CAN、MUSTについて話し合ってみるとどの円とどの円が大きく重なり、どの円が重なっていないかを可視化できます(イメージ図ですが)。それを使い、MUSTとWILLが合致しているならCANを合致させるためのトレーニング、MUSTとCANが合致しているならWILLを高めるためのビジョンや目的意識の共有と共感、などの活動を取ると変わるかもしれません。
ローズ(CI&T)リーダーの使命は、チームの成長を支援すること。チームメンバーのパフォーマンスが低い場合、リーダーはそのメンバーが成長するための条件や機会を提供することはできますが、成長そのものは各自が行う必要があります。 成長のきっかけを作るには、その人が何を望んでいるのか、何に魅力を感じているのかを理解することが大切です。本当の目的が見つかれば、たとえ今パフォーマンスが良くなくても、成長できる環境が見つかる可能性があり、状況を変えられるかもしれません。それを実現することができた時、正しい考え方を持った新しいリーダーが誕生するのです。
17. 今後のGlobalの成長や、1社でのカバレージの限界を鑑み、製薬会社間でのシステム協力、システム相互利用など、検討できるものなのでしょうか?金子様(田辺三菱製薬)非競争領域では多いにあると思います。これまでいくつかの領域でシステムの共同開発などを進めたケースもあります。IT・デジタル領域は会社を亘って共有できることも多々ありますので、患者さんに向き、その為に協働してゆく集まりの組成も進めてゆきたいと考えています。
原様(参天製薬)製薬会社間での協力だけでなく、製薬の枠を超えたヘルスケアのエコシステム内のプレーヤー間で幅広く協力を進めたいですね。イベント前半のBackgroundの部分でも少し触れましたが、業界の思わぬところに接点があるものです。皆さん一緒に業界を盛り上げていきましょう。
18. ヒトは「変化」に対して、恐怖を感じ、本能的に変化の少ない選択肢を選びがちであると感じています。スダさんのご紹介されたドラッガーの言葉に集約されるかと思いますが、企業内の戦略として、「変化を!」とうたってみても、その文化は「安定を」という空気感(文化)のなかでは、なかなか響きにくいように感じています。人間の安定をのぞむ本能的な部分を凌駕していける、健全な変化を浸透させる戦略はありますか?須田様(アステラス製薬)人が変化を恐れ、変化の少ない選択肢を選びがちというのは本当だと思います。将来の環境が変わらないのであれば、大幅に変化させる必要はありません。人類が”火”に初めて触れた時を考えてみましょう。今まで使っていないのですから、火を使わなくても生活できます。でもきっと火に興味を持ち、潜在的な価値を見出し、うまく使えないかと試行錯誤を始めた人がいるんでしょうね。最初は火傷したりするので、周囲の人は「見れば危険なのが分かるじゃないか。あんなものに近づいて火傷するなんて馬鹿だなあ」と思うでしょう。でもいつか、火を使うことで過去に作れなかったものを作ったりする様子を周囲はうらやましく思い始めます。そうしたら勝ちですね。
原様(参天製薬)「変化を!」と変化があたかも最終目標のようにうたっても、誰もそれに乗ってはくれないと思いますが、変革によってもたらされるビジネスの価値創出の機会拡大、組織ケイパビリティの向上、収益の改善、そして各社員の将来における貢献機会の拡大というストーリーライン(会社によってもちろんストーリーは異なる)を社員に提示したうえでの「変化」であるべき。このストーリーラインが実現しなかったときの将来、つまり多数の社員が安定のみを求めた後におとずれるネガティブなストーリーラインにこそ恐怖があるということを、経営側がしっかり社員に伝えていくべきなのだと思います。弊社においては、経営層から長期ビジョンや中期計画の方向性について社員の理解を高めるための機会を頻繁に儲け、変革を支える組織文化の醸成に努めています。
19. 患者が持っている、これまで、既存の企業や行政に相談してもソリューションが得られないことに踏み込むには、患者自身が課題をリスト化し、アジャイルにソリューション確立に挑戦してくべきでしょうか?アンメットニーズと聞こえはいいですが、本当にUnmetのままのことが多いと思っています。金子様(田辺三菱製薬)これまで、製薬会社は患者さん中心と言いつつも、真にそこに触れてきたことは少なかったように感じます。規制という障壁もありますが、患者さんの為に仕事をするという意識をもって、製薬企業が挑戦を始めなくてはならないと感じています。そして、患者さんにつながるためには、これまで経験をしてこなかった、アジャイルの考え方が必須と思います。
19. アジャイルとPOCって同義の部分もあるんですかねローズ(CI&T)アジャイルは「手法」であり、スクラムはアジャイル手法の一つです。 スクラムでは、一連の作業(バックログ)をサイクル(実装・テスト・改善)を回して行い、すべてが完了するまでそのサイクルを繰り返します。 PoCは、ソリューションの実装を最終化する前に、サイクルの中で物事を確認する方法として使います。試す、測る、改善するという考え方は同じですが、解決する内容の範囲が異なると考えます。
20. (原様へ)日本由来の組織をグローバル化するにあたって、一番苦労された点(している点)はどういった部分がありますか?原様(参天製薬)日本での決定事項を順次海外に展開するという過去のモデルを続けていくと、海外メンバーが意思決定の上流に加われないことにより、グローバル組織の一員としてのエンゲージメントも生まれないだけでなく、実行段階において案件のオーナーシップがグローバルで共有できないという問題も出てきます。また、組織の形態としてグローバル化できていても、オペレーションモデルやガバナンスがグローバルで一本化されていないと、あちこちで地域のローカル最適が起こり、デジタルITのソリューションのROIをグローバル最適化できません。多くの日本企業が、IT部門に限らず様々な機能のグローバル化で抱えている共通の悩みだと思います。弊社においては、トップダウンでデジタルITの組織の構造をグローバル混合型にして、意思決定と実行プロセスに日本海外の境目のない仕組みを作るのは数か年のトランスフォーメーションでした。このような組織での経験のないメンバーにとっては戸惑いもあったようですが、一方でグローバルで多様性の高い組織による環境に魅力を感じてもらえるようになってきています。
21. 今回のテーマに関して、海外での事例があれば教えていただけますでしょうか。原様(参天製薬)弊社では、デジタルによる眼科エコシステムを進化させるため、例えば医療従事者、医療機関に対するオンライン医療プラットフォームの充実を進めております。アジア事業を展開されている SantenMDという、眼科医向けの最新情報を提供するモバイルアプリは、既にアジアのターゲット医師の 60%の眼科医が利用しています。 今年オランダとフランスで開始した SANTEN EYECARE EDUCATION(SEE)は、欧州の眼科領域の専門家の持つベストプラクティスへのアクセスが簡単になり、眼科医が自身のペースで内容をカスタマイズすることができ、新しい教育プラットフォーム となっています。今後他のヨーロッパ諸国への展開も予定されています。ヘルスケア領域におけるデジタルサービスのレバレッジポイントを見極め、今後も多方面でサービスを展開していく予定です。
22. 多分 製薬企業は結局開発にアジャイルを入れるだけなんで、そのまま時代から遅れていくんでしょうね・・・。金子様(田辺三菱製薬)開発にアジャイルという形式的なアプローチで有ればおっしゃる通りかと。製薬会社も、真に患者オリエンテッドにならなければならないと考えており、患者さんが本当に欲していることに応えながら、患者さんにつながってゆくことを追求するなら、本当の意味でのアジャイルが必要になると思います。これが、今後の製薬会社のあるべき姿と信じ、追及してゆきたいと考えています。
23. 基本的なことですが、アジャイルを導入する際の費用計画はどのようにされていますか?ウォーターフォールでは全体感が当初からある程度あると思うのですが、アジャイルでやるとなると読めなくなるのではないかという危惧が付きまとうのかなと思います。 経営層ではどのようにアジャイル案件の費用の妥当性を評価しているのでしょうか?金子様(田辺三菱製薬)アジャイルを適用すべき案件に、正しくアジャイルを実践すれば、アジャイルの費用がウォーターフォールの総額を超えることはないと考えています。それだけアジャイルの手法のほうがリスクを軽減できると考えています。プロジェクトの投資計画ということであれば、最も重要な機能の開発に絞り、第一弾の投資計画を立て(バッファはある程度取ります)、その後は定常の運用に継続の改善費用を乗せた形で予算化するのが良いと思います。大きな改善が出来てきた場合は、NPVをははじき別途プロジェクトを立てます。
原様(参天製薬)戦略ドメイン毎に活動目標のカテゴリー管理をしている場合、予算計画はPJごとではなくて、戦略ドメイン毎で行うことにより、ドメイン内の複数のアジャイル活動が混ざった形で予算策定ができます。ドメイン内では活動の開始停止のタイミングなど自由を持たせられるようにして、他のウォーターフォール型案件とは違う粒度で予算管理できるのが理想と考えています。なお、経営層に対してPJ単位での報告では粒度が小さすぎるため、戦略ドメイン毎のROIを示すようにすると良いと考えています。弊社のデジタルポートフォリオ管理においても、予算の考え方、活動成果のトラッキングの仕方などを含めた、グローバルデジタルガバナンスの枠組みの見直しが進行中です。
24. 製薬企業の大きなコストドライバーであるセールス&マーケティング領域のトランスフォーメーションについてお伺いします。医療の個別化や希少疾患領域という文脈の中で、従来のSOVを中核に沿えた活動から脱却・トランスフォームし、本当の意味で患者さんを中心とした活動(例:そもそも受診をしていない人が適切な受診ができるなど)へのシフトが重要と拝察します。登壇者の皆様が、コマーシャルモデルのトランスフォーメーションを、①どのように進めているのか、②進める上で重視している点、③難しいと感じる点、についてご教示いただけると幸いです。金子様(田辺三菱製薬)まだまだこれからですが、SOVのモデルから脱却し、プル型エンゲージモデルへの移行は必須と感じます。これは、従来のMRの役割である情報提供の効率化を早急に進めるものです。さらにその先には、おっしゃるようにMRの新しい役割、モデルを作って行く必要があり、それは患者さん中心であり、自治体等を巻き込んだエリアでの新しい医療モデルの構築なのかもしれません。①効率化と、新しいモデルの構築は同時に進めてゆくべきものと考えております。②この変革を進めてゆくうえで、しっかりとマイクロセグメントされたDrのニーズを把握することと、MRのモチベーションの維持・向上は重要です。③新しいも出作りで、新しい接点構築を進めてゆき、医療のニーズに応えてゆけることは確かなのですが、これらが自社の売り上げ貢献になるのかという説得が難題です。
25. アジャイル型では失敗する確率も高くなると思いますが合っていますでしょうか?その場合,日本企業は失敗への許容度が低いと思うのですが,アジャイル型において,どのように失敗する事への心のハードルを下げていますでしょうか?須田様(アステラス製薬)アジャイル型により失敗確率が高くなる、とは別の考え方をしてみてはいかがでしょうか?不確実性が高まっている時代において”やってみなければわからないこと”が増えています。その時代における取組み方として”致命傷となる失敗を避けるためにアジャイル型を用い、小さな失敗から学習して成果を出す”と考えると、”失敗する確率が高いこと”が必ずしも悪いとは限りません。ただ失敗へのハードルを下げるのではなく、やって良い失敗(学習できる失敗、挑戦に伴う失敗、リカバリーできる失敗)とやってはいけない失敗(学習するものがない失敗、致命傷となる失敗)を区別することで、やって良い失敗に対するハードルは下がるのではないでしょうか?
ローズ(CI&T)アジャイル手法では、タスクを細分化し、その都度確認をしながら進めるので、毎回きちんと振り返りをし改善を重ねれば、1つの失敗は小さな失敗(手戻りが比較的少なく修正可能)となります。ひとつひとつの小さな失敗を改善することで、結果として成功に導くことができる確率は従来の手法よりも高いかもしれません。また、予想外に状況が変化した場合、途中で方向性を変更することも可能です。ですから、アジャイルを失敗率の高さで測るのではなく、より柔軟で適応性の高いモデルで、小さな失敗から学ぶ機会として捉えてはどうでしょうか。