ビジネスインパクト:変革の始まり

ビジネスインパクト
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CI&T


今日、Cレベル(経営幹部レベル)の間では、会社のDXを成功させることは最大の挑戦であると言われています。DXを成功させる秘訣とは、最初からビジネスの成果を生み出すことです。

私はCI&Tのトップを24年間務めてきた中で、テクノロジーが与えてくれる世界を変えるツールが多くなるほど、人的要因が重要になってくるという確信を得ました。テクノロジーだけで生み出せる結果をさらに先へ進めるには、「人間の潜在能力」が必要になります。これが、進化を推し進めるトランスフォーメーションの効果的な媒体となります。私の見解では、人間の潜在能力は「知識」と「知識によって繋がっているもの」という2要素の組み合わせにより実現されます。

現在のビジネス界や、VUCA的性格(変動的、不確実、複雑、曖昧)を持つデジタル世界へビジネスを参入させるスピードについて考えた場合、この人間の潜在能力といったものを、最大限に駆使して有効活用する必要性を強く実感します。現在、他人と繋がる方法や情報源へのアクセス方法は多種多様に存在し、これらをうまく活用することでトランスフォーメーションの効果がさらに高まります。こうして効果が上がり、目的とうまく一致すれば、テクノロジーだけでは到底なし得ない、想像もできない方法で変革を達成することができます。

ここで、現代の大きなパラドックスが浮上します。つまり、人間の可能性が新たに広がる一方、会社自体はまだ古い企業環境から脱却できていません。特に、大規模で伝統的な会社の場合、この新たな専門的側面に対して十分な準備ができていません。そこには巨大なギャップが存在し、人間に元々備わる潜在能力を組織が有効に活用できていないのです。会社は、優れた人的能力やテクノロジーを持っていても有効に活用できず、新規デジタル顧客を満足させるという究極の目標を達成することができません。

そこで、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が必要となるのです。これは既にありふれた市場定義に加えて、会社が、人間に元々備わる潜在能力を解き放ち、これを活用して顧客の期待に応え、満足させ、喜ばせる準備することに他なりません。しかし実際には、DXがいまだに実現せず、また大企業内部からDXを達成して社会に大変革をもたらすのは難しいと思われるケースも多いことでしょう。

このテーマについてじっくりと考え、質問に答えるため、4月初めに、サンパウロのCubo Itaú本部でCI&Tビジネスインパクトサミット2019を開催し、ブラジルや世界各国の大企業の上級管理職による会議を行いました。私たちは共に、新たなつながりを築き、このテーマについて話し合いました。現在多くの会社が、20世紀の製品中心の工業時代から、21世紀の顧客やデジタルを重視した情報時代へと変身させるという大きな課題に直面しています。そこで、こうした会社に、私自身のインサイトを共有する狙いがありました。

大きな課題とは

と、興味深い結果が得られました。大企業のCレベルの70%が、現在直面する最大の困難はトランスフォーメーションプロセスを成功させることだと回答しています。この場合も、すでにトランスフォーメーションプロセスを導入し、何らかの良い結果を得ている会社でさえも、上記のギャップがまだはっきりと表れています。

「会社とは、簡単に変わらないものです。変革への抵抗は非常に強力です。」

Carrefour eBusinessのCEO、Paula Cardoso氏のビジネスインパクトサミットの討論会での発言

もうひとつの興味深い結果としては、DXを効果的かつ持続可能なものとする責任:プロセス中にビジネスインパクトを生み出すということに関係しています。自社のトランスフォーメーションを開始するための推進者としてビジネスインパクトを生み出していると回答したのは、わずか12%でした。一方、多数派の回答では、24%が製品とサービスの改善を指摘し、23%が市場でのリーダーシップの維持を主要な推進力として挙げました。

当社の見解では、オファーの改善、リーダーシップの維持、またはその他の問題の解決など目的の如何に関わらず、DXを持続させるには、素早く結果を出そうと最初に考える必要があります。つまり、会社がDXの取り組みの途中で具体的なビジネスインパクトを短期間で得ることがなければ、どんな大きな目標やDXも達成することはできないでしょう。その意味で、ビジネスインパクトを生み出していると回答した12%は、正しい道を歩んでいると言えます。

問題を正しく理解

DXに関して言えば、答えはなく、具体的な進歩すらありません。2016年~2018年の2年間に、6,000人以上(2018年だけで4,000人)がCI&Tを訪問しました。意外なことに、彼らは普通のIT担当者だけではなく、多種多様な分野の上級リーダーでした。108人がCEOであり、その大半がそのセグメントをリードする大企業からでした。

こうした経営トップの話を聞き、当社の主要取引先と話し合い、その内容を深く分析した結果、会社がプロセスに着手しDXへの投資する原因となる3つの主要な悩みを発見しました。我々が取り組むべきなのは、以下の3つなのです。

1. 規模についての機敏性が必要な会社

主に、強力な指揮体制が敷かれた、規制の厳しい伝統的な会社が該当します(例:銀行など)。こうした会社の回答者によれば、非常に大規模なテクノロジープラットフォームや、やや官僚的なプロセスに縛られているため、それが消費者ニーズに応え、規模におけるビジネスの機敏性を得るのを遅らせていると感じています。

2. 顧客中心主義の導入が困難な会社

この2番目のグループは、象徴的ブランドの巨大企業が該当します(例:コカ・コーラやネスレなど)。自らのビジネスや製品への注目方法については熟知していますが、経営陣が現場の顧客から乖離しすぎているため、顧客中心主義に比重を置くことが簡単にできません。実際コカ・コーラ社は、自社製品の顧客層をよく把握していないのです。ネスレも同じ問題を抱えています:スプレッドシートに表示される何百万人ものブラジル人の中で、顧客が誰か、そして何を好み何を信じ、何を求めているかを把握できていません。また、このグループには、仲介業者を介して業務を行っているためにクライアントについてはほとんど知らない、保険会社のような会社も含まれます。

3. 飛躍を遂げて、ディスラプションの道を見つける必要がある会社

3番目のグループには、新しい飛躍的なテクノロジー変革の可能性についてすでに十分理解しており、チャンスや破壊的創造の可能性に関する持論を持っている会社が該当します。こうした会社は新たなビジネスモデルを開発し、新たな収入源を生み出し、新たな大規模ビジネスを見つけたいと思っています。こうした会社はDXに着手する意欲を十分に備えていますが、人間の潜在能力の開発や、潜在能力とテクノロジーの統合がまだ実現できていません。

あなたの会社の悩みは上記のうちのひとつか、または全て、ということもあるかもしれません。通常は、DXの取り組みを始めると、他分野の取り組みにも改善の必要性が生じてきます。ここで重要なことは、開始時にガイドラインをきちんと定義しておくことです。

次のステップ

ここまでが明確になったら、次に、企業文化、実践、プロセスをあまり急激に変化させないように「ステップバイステップ」でトランスフォーメーションを進めようとするケースも多く見られます。ただし、当社の経験から、この方法ではうまくいきません。その代わりに、リーンデジタルトランスフォーメーション(LDT)モデルを提案します。これはアジャイル手法のプロセスと実践をデザイン思考と組み合わせ、ビジネスにプラスの影響を与える持続可能なDXを実施することができ、リーンの基礎との間をしっかり繋ぎます。

13年間熱心に学んで判明したのは、LDTは、顧客中心主義や連携に加えて、迅速かつ継続的な顧客体験を作る責任を負う、各種専門分野にわたる自主的なチームの段階的確立をベースとします。こうして少しずつ従来の型が壊され、新たなデジタル思考が具現化し始めます。

このトランスフォーメーションモデルは、当社の顧客に素晴らしい結果をもたらしました。これには、2つの大きな理由があります:ひとつ目の理由は、トランスフォーメーションの取り組みの設計が、顧客側に寄り添い、顧客の抱える主な悩み、特異性や実際の実装条件を尊重して行われることにあります。二つ目は、トランスフォーメーションの取り組みの初期段階にビジネスインパクトを生み出すという、前述の戦略的目標が達成されたことです。

「大企業では、プロセスの途中で道を見失ってしまいがちです。大企業は伝統的モデルに慣れています。そこで当社は5年前に、もはやこれは自社だけでは不可能であり、正しいパートナーを引き入れる必要があるとの判断に至りました。」

ネスレのDX担当重役、Carolina Sevciuc氏のビジネスインパクトサミットでの発言

ビジネスインパクト:DXプロセスで欠落しているもの

これまでに述べたように、私の見解では、大企業のDXプロセスに大きく欠けているものは、ビジネスインパクトです。その理由を説明しましょう。どんなに多くのプロセスを確立させても、企業文化の改善や優れた決断方法を教えるためにどんなに多くの戦略を採用しても、その「数」に意味はないからです。具体的な結果を短期間でもたらすものでなければ、DXは持続可能ではありません。短期間で収益にプラスの影響がなければ、プログラム自体が存在しなくなります。

「以前(新しいプロセスの実装を始めた時)、当社は、あらゆる流行のタイトルがつけられた偽物を多く目にしました。トランスフォーメーションが飛躍的に成功すると思わせておきながら、実際にビジネスインパクトの収穫段階になると、当初思っていたほどの効果は得られませんでした。」

Raízenの副社長Fabio Mota氏、ビジネスインパクトサミットの講演より

短期間でビジネスにインパクトを生み出すことは、こうした利益をすべて大規模に維持・拡大するための土台となるはずです。そしてこれが、顧客のトランスフォーメーションプロセスにおいて、ひたすらに顧客と協力して追求する命題です。最長3か月というごく短いサイクルで、DXの取り組みは価値を生み出さなければなりません。これが達成できず、ビジネスの改善が示されなければ、失敗と言えます。

「大企業が抱く最大の恐怖は、特に株式を公開している場合、投資家の評価を損なうことなく四半期決算を実現していけるだろうか、ということです。トランスフォーメーションには非常に大規模な投資や業務方法の変更が求められ、さらに顧客中心主義に重点を置く姿勢が必要です。私の経験では、私たちがすべき最初のことは、プロセスの成果を示す方法を正しく知ることです。」

ItaúのCIOであるRicardo Guerra氏、ビジネスインパクトサミットの公開討論会にて

当社の顧客であるRicardo Guerra氏が、Itaúで共に構築したプロセスについて上記のように話した後、私はJeff Bezos氏(AmazonのCEO)が会社設立2日目について語った、かの有名な引用文をあえて再び読んでみました。私にとって、DXの2日目はインパクトが足りないようです。私のバージョンでは、文章はこんな風になります:

「ビジネスインパクトのないデジタルトランスフォーメーションは、いわば静止しているようなものです。後に続くのは、見当違い。その次は大きな不快・苦痛を伴う減退。そして最終的には消滅です。」

Cesar Gon

最後から始める

リーンサミット2019の後、テキサス州ヒューストン滞在中にNASA本部を訪問するという有意義な経験をしましたが、その際に読んだニール・アームストロング船長の言葉をここに引用します。

「プロセスの最後から開始して、遡る」

Neil Armstrong

DXプログラムにおいてビジネス成果を確実に得るためには、「最終的に生み出したいインパクト」を最初に定義しておく必要があります。このインパクトは、主な問題のポイントの改善に関連していなければなりません(上記)。

「ひとつの事業部門を引き抜いて隔離し、顧客のニーズを理解し、成果を活用し、顧客の基礎を迅速に成長させ、顧客が真に高く評価するものとは違う方法で収益化できることを示しながら、短期間の実験に基づいて取り組まなければなりません。この際、成功事例をいくつか示すことで、多くの注目を集めることができます。そこで、株主の言葉を伝えるのがよいでしょう。彼らが高く評価する点から始めて、決してあきらめない姿勢を示す必要があります。」

ItaúのCIOであるRicardo Guerra氏、ビジネスインパクトサミットの公開討論会にて


ただし、この回帰的な立案では戦略、設計、エンジニアリングの規律を組み合わせて、会社の望む成果へと導くプロセスを設計する必要があります。これらの3つの規律は社内にすでに存在しているにも関わらず、会社の既存枠を通してやりとりしているため、互いに分断されています。せっかく戦略家が斬新なアイデアの戦略を生み出し、設計者が優れたキャンペーンを創出し、エンジニアが素晴らしいテクノロジーアーキテクチャを開発しても、実際には誰も会社にインパクトを生み出していないことになります。変革を起こす力のある「人間の潜在能力」を有効に活用して、こうした各能力をリーンデジタルの手法でひとつにまとめ上げる必要があります。

知識の3つの支流:戦略、設計、エンジニアリング

規模のインパクト

ビジネスインパクトを生み出すという主要命題に加えて、このモデルの規模を調整する能力を開発する必要があります。これは、間違いなく、大きな課題です。多機能にわたる自立したチームにおけるバリューストリームごとの作業の「縦の線」と、この運営方法を会社全体の基準に変換する「横の広がり」との間に調和点を見出すことは簡単ではありません。

こうして、当社は、本質的な規模でトランスフォーメーションを実現する4つの柱を確立して、LDTモデルの基礎を再検討して補強します。これには以下のものが含まれます:


1 - 顧客中心:会社全体でこの方向に進まなければなりません。

2 - 小規模の自立チームを創設:ひとつのバリューストリームのみに専念する各種専門分野による自立した複数のチームをベースとした運営がなければ、デジタルのスピード・敏捷性の達成や会社全体の変革は不可能です。

3 - 独創的な目標:革新するためには、リスクを負い、実際の達成点よりも高く目標を掲げて自ら鍛錬する必要があります。ただし、これは通例、伝統的な企業環境にはまず見られません。

4 - 速やかな実験サイクルを作り出し、学び続ける能力:実験を助長する環境が不可欠であり、また、プロセスにおいて各チームが学んだことは、他のチームにも共有されなければなりません。集合知を素早く着実に構築するため、情報のスムーズなやりとりや協力が欠かせません。

以上の主要4項目は必要不可欠であり、一貫したトランスフォーメーションを実施する方法、プロセス、ツールに対応するため、常に戦略の中心に置かなければなりません。

顧客の成果

最後に、この命題を具体的に示すために、いくつかの大口顧客のケースを簡単にご紹介しましょう。彼らはDXプロセスの最初の段階ですでにデジタル機能をインストールすることに成功しており、さらに、非常に大きなビジネスインパクトを得ることができました。これらの顧客はすべて、主な問題点をきちんと規定しており、達成したいビジネスインパクトを明確に定義して、LDTモデルを使ってプロセスを設計しました。

コカ・コーラ社:新しいアジャイルな作業プロセスのインストールによって、以前は18か月かかっていたリードタイムをわずか3か月にまで低減できました。

Ânima Educaçãoグループ:作業プロセスの導入後4か月で、新たなデジタルソリューションの開発時間を30日から8日へ削減することに成功しました。これにより、NPS(ネットプロモータースコア)の大幅な増加を実現しました。さらに、リーンデジタル方法論に従って開発された最初のソリューションにより、ビジネスの主な問題点でもあるオンライン登録のプロセスを修復しました。

Blue社:新製品と新サービスの開発にかかる期間が、従来の11か月間からわずか3か月間にまで短縮されました。ソリューションの最適化も、TudoAzul Advantageプログラムへの参加人数では30%の増加、18か月間に買い戻されたマイルの合計では39%の増加など、良い成果をもたらしました。

Vivo社:すでに最初の作業サイクル(最初の90日間)において、転換率とB2Bプラットフォームの利用率を2倍にすることに成功しました。

Raizen社:6か月間で、プラントの使用に対する転換率が2倍になりました。

この記事で、あなたの会社が変革を起こす潜在能力を解き放つのに役立つインサイトをもたらせたとしたら幸いです。最後に、NASA訪問時の興味深い言葉をひとつ引用します。

「私たちは月で学んだものを利用して、次なる大きなステップに進みます。つまり次は、宇宙飛行士を火星に送ります。」

NASA長官、Jim Bridenstine氏


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