リーダーシップの変革

2022年6月08日 | 分程度で読める記事です
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CI&T

はじめに

現在、製薬会社の多くのリーダーは、チーム/組織を変革する方法/ソリューションを熱心に模索しています。テクノロジーは人々の生活や行動に大きな変化をもたらしました。これは、社会的、政治的、経済的なすべてのシナリオや、より伝統的な組織の機能に影響を及ぼします。矛盾しているように見えるかもしれませんが、ますますデジタル化する状況では、データを分析し、情報をコンテキスト化し、新しいものを作成する人間の重要性も高まっています。したがって、テクノロジーは人間の可能性を高める方法として理解されるべきです。

「人/チームビルディング」は、DXを成功させるための最も重要な鍵になります。大切なことは、パーパス(目的)を掲げて、強いメンバーでネットワーク組織を作っていくこと。そのために、リーダーはどのように人々にやる気を感じさせ、同じビジョンを共有し、同じ目標に向かって一緒に取り組んでいくことができるでしょうか?

先日CI&Tは、日本のトップ製薬企業である参天製薬、田辺三菱製薬、アステラス製薬のDXリーダーを招き、「あたらしい現実:「今」集中することで生み出される文化とは」と題して、ディスカッション形式で語るウェビナーを開催致しました。

ウェビナーとその後の質疑応答では、日本のトップ製薬企業のDXリーダー達と、CI&Tのシニア・オペレーション トランスフォーメーションマネージャーであるローズが、参加者の皆様からの質問をもとに、今行なうべき「リーダーシップの変革」について語ってくれました。


新しいリーダーシップ

これまでの製薬会社では、確かなキャリアと指揮統制を目的としたリーダーシップにより、ほとんどのトップリーダーはよりデジタルなプロファイルを想定する準備ができていませんでした。しかし、これからの新しいリーダーは、指揮をしたり、協力して答えを提供したり、適切な質問をして制御するようなトップダウン型ではなく、チームメンバーに権限を与え、ともに働き、ともに学び、ともに実行するリ・リーダーシップのスタイルに変化する必要があります。トップのリーダーシップが変わることで、チームも変化していくのです。

以下は、ファーマのリーダーが組織を変革するために役立つ3ステップについてご説明致します。


絶え間ない学習

デジタル時代のリーダーシップは、自身と企業の両方で絶え間ない学習方法を育み、実験とリスクテイクを促進する環境を作り出すことが大切です。より多くの経験を積み重ね、知識を得ることで、大きく成長できるのです。アジャイルメソッドは、このプロセスに役立ちます。また、知識を得ることと同じように重要なのは、情報の共有とコラボレーションの精神。一丸となって成果を構築していくマインドを取り入れる必要があります。各製薬会社のリーダーたちが、これまでの経験の中でどんな方法論を導き出したのか、具体例を用いて語ってくれました。

グローバルな企業を牽引される中で、グローバルでのチームビルディングのやり方や、自分のアイデアを形にしていく方法論などありましたら教えてください。

金子:まずはどんな人間であるか、互いを知り合うことが重要だと思います。結局仕事は人で動きますので、一緒に仕事をしたいと思えるかどうかが重要です。往々にして、グローバル企業ではそれぞれバックグラウンドが異なりますので、必ず互いの興味を引きあうことはできる環境にあると思います。あとは、自分が何者で、どんなことを考えているかをきちんと伝えられる機会を作れるかどうかにあると思います。アイデアを形にしていくのは、私の場合、1枚の絵に考えを落とすところから始めます。その1枚の絵をもって、信頼できる仲間(率直に意見を言ってくれる人)少なくとも10人程度にぶつけ、フィードバックを反映していくというのが良いと思います。ワークショップ形式で、1枚絵をたたいていくというのも効果的です。私の場合は、1枚の絵でシンプルに表現することにこだわります。

原:文化の違いやコミュニケーションスタイルの違うメンバーが集まる中でアウトプットを出していくには、異文化チーム内の信頼関係構築が重要です。以心伝心という言葉がありますが、文化の異なるグローバルチーム間でこれは通じません。“1”言って“10”理解してもらうのではなく、“10”言っても“1”くらいしか理解されていないかもしれないと思ってことに当たることも必要です。言葉の意味が伝わっているかではなく、伝えたいメッセージの本質がメンバー間で“共感”できているかを確認しながら次に進むという作業が大切だと思います。ところで、大人数の会議に日本、アジア、欧米などの文化圏出身の参加者が混在していると、コミュニケーションスタイル的がダイレクトなメンバーが、その場を掌握してしまうということがあります。議事を進める人が異文化コミュニケーションの勘所を理解していないと、うまいファシリテーションはできませんので、それが苦手なリーダーの方々はうまい方から社内でメンタリングを受けたり、時には社外の専門の講習を受けたりするのも良いものです。私自身は国連勤務時代に繰り返し訓練を受けましたが、このスキルは一朝一夕で身につくものではありませんので、自身のグローバルキャリア開発のプログラムの一つに組み入れるのも手だと思います。

企業のグローバル化やDXのための人材・タレント戦略についてどうお考えでしょうか。

原:国内と海外のデジタルタレントを別々の人材プールとして扱わず、一つのフレームワークで考えています。デジタルワークプレースの進展により、大陸や時差をまたがったレポートラインを当たり前のようにすることで、適材適所のオプションが広げるようにしています。また、内部での育成と外部からの獲得をどちらか一方で検討することはせず、ハイブリッドにすることによって、社内にないタレントは外部から獲得し、内部メンバーの刺激と成長にも繋がるように心掛けています。求める人材像については、技術的なスキルに秀でたタレントを多数抱えるのではなく、世の中にあるデジタル技術・サービス・プロセスなどをうまく社内のイノベーションに活かす提案企画力や、それらを活用してビジネス変革をするドライブ力のようなスキルを大切にしています。

トランスフォーメーションを遂げるためには、人材・システムなどの組織形態の変更・新しい企業文化の醸成など包括していると感じます。人材にフォーカス当てる場合、まずどこのポイントや層に傾注するべきなのでしょうか?

金子:まずはトップにデジタルを理解してもらい、興味を持ってもらうことが重要と考えます。外部の講演を依頼したり、デジタルデバイスを経験してもらったり、体験してもらうことが重要です。また、トランスフォーメーションのイメージを定量数値も含めシンプルに提示することが重要と感じます。その次は、課長レベルのミドル層です。往々にして、中間管理職が変化を阻害するケースが多いと思います。これは、明確なオペレーションの責務を持っているため、変化を嫌がるからです。変化に対するインセンティブを設計するか、人を変えることが必要と感じます。

原:経営層とデジタルの執行体制の間で、会社のデジタル推進モデルを中央管理型、連携型、分散型で進めるかどうか、ある程度のアラインメントをした上で、その推進体制のリーダー層と実行部隊のコアになるポジションの強化から進めることが理想だと思います。そのうえで実際に活動がある程度回り始めた中で、社内のビジネス部門との連携やある程度の自由度を持たせた分散型の人材を巻き込んだプロセスのガバナンスモデルを改善強化していく必要があります。この過程で重要なのは、既存の取り組みのうち、芽の出そうなもののスピードを殺さず支援することと、戦略に合わないものを見直すこと。こうしたガバナンスが効くためには上記のコア人材がリーダー層も含めて機能している必要があるのではと思います。


新しい視点

リーダーは失敗や問題点に対して、見方を変える必要があります。成長の機会と革新の手段とみなされる失敗は、新製品やサービスを開発する過程の自然な部分として理解されなければなりません。トライ&エラーを繰り返し、改善をしながら学ぶことで、人や組織は進化を遂げるのです。トランスフォーメーションを進める過程でぶち当たった壁やさまざまな問題点に対して、どんな視点で対処してきたのか、リーダーたちに語ってもらいました。

患者やMR(Medical Representatives)を重視する製薬会社において、デジタルトランスフォーメーションの推進は必要なこと。そのうえでハレーションが起きた場合、どんなふうに解決してきたのでしょうか?

金子:少なくとも弊社では営業がリアルを重視しており、デジタルへの移行ということに対して確かに摩擦は大きいと思います。一方で、従来の医療情報の提供という枠組みでできることはどんどん限られてきています。解決ができているわけではありませんが、顧客のニーズ(必要な情報が得られればFace to Faceでなくてもよい)を第一として、効率化できる部分は効率化し、一方で営業の活動の定義を再構築することも必要です。すなわち、単なる情報提供から脱却し、ステークホルダーも拡大させながら、新しい接点構築の在り方を営業と共に作って行くことが必要だと思います。

グローバルのメンバーと共にデジタル変革を行なう中で、日本発のシステム変革という案件は非常に少ないことに驚きました。変革について、US、EU、APACのメンバーを巻き込み、リードし、変革していくことの難しさを感じることはありますか?

須田:日本人や日本社会はベースとして価値観を共有できていることが多いので、価値観が違う相手に自分の想いを説明して理解してもらうことに慣れておらず、得意でないと感じています。言語のハードルもありますが、それ以上に価値観を共有しない相手との合意形成に至るプロセスのトレーニングを受けていないことが原因の一つかもしれません。企業において、合意形成に至りやすいのは顧客(ライフサイエンスにおいては患者さんや健康を願う人)の価値を語るところから始めると良いかもしれません。

ヒトは「変化」に対して恐怖を感じ、本能的に変化の少ない選択肢を選びがちであると感じています。ヒトの安定をのぞむ本能的な部分を凌駕していける、健全な変化を浸透させる戦略はありますか?

須田:人が変化を恐れ、変化の少ない選択肢を選びがちというのは本当だと思います。将来の環境が変わらないのであれば、大幅に変化させる必要はありません。人類が”火”に初めて触れた時を考えてみましょう。今まで使っていないのですから、火を使わなくても生活できます。でもきっと火に興味を持ち、潜在的な価値を見出し、うまく使えないかと試行錯誤を始めた人がいるんでしょうね。最初は火傷したりするので、周囲の人は「見れば危険なのが分かるじゃないか。あんなものに近づいて火傷するなんて馬鹿だなあ」と思うでしょう。でもいつか、火を使うことで過去に作れなかったものを作ったりする様子を周囲はうらやましく思い始めます。そうしたら勝ちですね。

原:変化があたかも最終目標のようにうたっても、誰もそれに乗ってはくれないと思いますが、変革によってもたらされるビジネスの価値創出の機会拡大、組織ケイパビリティの向上、収益の改善、そして各社員の将来における貢献機会の拡大というストーリーライン(会社によってもちろんストーリーは異なる)を社員に提示したうえでの「変化」であるべき。このストーリーラインが実現しなかったときの将来、つまり多数の社員が安定のみを求めた後に訪れるネガティブなストーリーラインにこそ恐怖があるということを、経営側がしっかり社員に伝えていくべきなのだと思います。弊社においては、経営層から長期ビジョンや中期計画の方向性について社員の理解を高めるための機会を頻繁に儲け、変革を支える組織文化の醸成に努めています。

製薬企業の大きなコストドライバーであるセールス&マーケティング領域のトランスフォーメーションについて、医療の個別化や希少疾患領域という文脈の中で、従来のSOVを中核に沿えた活動から脱却・トランスフォームし、患者を中心とした活動へのシフトが重要だと考えます。コマーシャルモデルのトランスフォーメーションを、どのように進めているのか、また、進める上で重視している点や難しいと感じる点について教えてください。

金子:SOVのモデルから脱却し、プル型エンゲージモデルへの移行は必須と感じます。これは、従来のMRの役割である情報提供の効率化を早急に進めるものです。さらにその先には、おっしゃるようにMRの新しい役割、モデルを作って行く必要があり、それは患者さん中心であり、自治体等を巻き込んだエリアでの新しい医療モデルの構築なのかもしれません。効率化と、新しいモデルの構築は同時に進めていくべきものと考えております。重視している点は、この変革を進めていくうえで、しっかりとマイクロセグメントされたドクターのニーズを把握することと、MRのモチベーションの維持・向上です。難題だと思うのは、新しいモデル作りで、新しい接点構築を進めてゆき、医療のニーズに応えていけることは確かなのですが、これらが自社の売り上げ貢献になるのかと説得することです。


共感が鍵です

リーダーは社員を理解する能力を開発しなければなりません。新たなソリューションや可能性を生み出すためには、多様な考え方や見解が必要になります。個々を尊重し、お互いの得意なことは活かし合い、お互いの苦手なことは補完し合うチーム作りが重要です。その中でリーダーは、メンバーの背中を押すような求心力や推進力を発揮することを求められています。会社の成功を築くのは、社員の力、才能、そして創造性です。彼らの好奇心に火をつけ、新たな学びをもたらし、視野を広げてイノベーションを育みます。その種はすべて、他者への共感があってはじめて生まれると言えるでしょう。

「リーダーに必要なのはメンバーだ」とのことですが、パフォーマンスの低い社員を抱えたリーダーのミッションはどう考えますか?

ローズ:リーダーの使命は、チームの成長を支援することです。チームメンバーのパフォーマンスが低い場合、リーダーはそのメンバーが成長するための条件や機会を提供することはできますが、成長そのものはメンバーそれぞれが各自で行なう必要があります。その成長のきっかけを作るには、その人が何を望んでいるのか、何に魅力を感じているのかということを理解することが大切です。本当の目的が見つかれば、たとえ今パフォーマンスが良くなくても、成長できる環境が見つかる可能性があり、状況を変えられるかもしれません。それを実現することができた時、正しい考え方を持った新しいリーダーが誕生するのです。

須田:キャリアに対する考え方はWILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(役割・責務)の3つの円が重なったベン図をイメージするとわかりやすいと思います。対象となる社員と、WILL、CAN、MUSTについて話し合ってみると、どの円とどの円が大きく重なり、どの円が重なっていないかを可視化できます。それを使い、MUSTとWILLが合致しているならCANを合致させるためのトレーニング、MUSTとCANが合致しているならWILLを高めるためのビジョンや目的意識の共有と共感、などの活動を取ると変わるかもしれません。


まとめ/総括

変革の多くは、上級管理職の最終通告によってもたらされるものではなく、最前線で活躍する社員たちからもたらされるものです。彼らのアイデアを大切にし、やりがいが感じられる環境を育むのはリーダーの仕事です。インクルーシブな環境を醸成するためには、一人ひとりが個々の役割に責任を持たなければなりません。互いを尊重し、他者の意見にも耳を傾ける、オープンなマインドセットを持つことも大切です。

従来の製薬会社では、アイデアが内部承認を得るまでに数か月ではなく数年かかる場合がありました。複数のアイデアを迅速に検証できる雰囲気を作り出すことで、ニーズにいち早く対応していくことができます。(リンクアジャイル記事)

CI&Tは、アジャイル手法を使用したWebサイト開発を支援するだけでなく、チーム内で「アジャイル」の考え方と文化を開発するための手順を示します。私たちは、会社やチームによって、アジャイル手法を使用するための最良の方法は異なるということも理解しています。チームに最適なプロセスを見つけて構築していきましょう。


当日のウェビナー動画も、弊社ウェブサイトで公開しております。
ご覧になりたい方は、こちらのページから無料でアクセス頂けます。
ウェビナーの後の質疑応答は、こちらのページからアクセス頂けます。
ウェビナーレポートは、こちらのページからアクセス頂けます。
ぜひ、併せてご覧ください。


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